2015年12月20日日曜日

"Ma place est dans la salle(私の席は劇場にある)" パリで劇場への客足を取り戻そうというキャンペーンが実施

昨日、Twitterを眺めていたら、このようなものを発見した。



カラフルな無数の舞台ポスターの中心に"Ma place est dans la salle(私の席は劇場にある)"の文字が。よく見ると、周りの小さなポスターは、どれも演目のタイトルの部分が、"Ma place est dans la salle"となっているのがわかる。

実はこれ、先月のテロ事件で減ってしまった劇場への客足を取り戻そう、というキャンペーン。12/18に劇場にみなさん来ましょう、と舞台関係者たちが人々に呼びかけを行っている。SNSでも"#maplaceestdanslasalle"という言葉やハッシュタグがいたるところで流れている。

↓このキャンペーンホームページもある。
http://www.maplaceestdanslasalle.com

アーサー王も。


Resisteも。


キャッツも。


この記事によると、テロ以降、やはり客足はかなり落ち込んでしまったということだ。特に、12月のクリスマスシーズンは、劇場の客足が一番伸びる時期だそうなので、事態は深刻そう。。。学校の校外学習の一環での観劇等がキャンセルになったり(テロ後そういった催しが一時禁止されていたらしい。)、子ども、若者の客足が落ちている、という。テロの実行犯はそういうことまでを見越してあの時期にテロを起こしたのだと思うと本当にゾッとする。

しかし、その反面、やっぱりフランスだなと思うのは、芸術、文化が「レジスタンス」であるということ。テロが劇場で起きたから劇場にもう足を運ばないというのは、却ってテロリストの思うツボ、今だからこそ、私たちは劇場に行き、舞台を楽しむことが重要なのだ、という反骨精神が至る所で見られる。日本だったらまずこういう発想は生まれないよな、、、と思ってしまった。

もちろん、テロ後、セキュリティー等の機器が導入されたり、そういった面が強化されるという変化はあるみたいだけれども、フランスが誇る舞台文化はテロには屈しないのだ、という誇りそして気合がこのキャンペーンにも感じられる気がする。

劇場以外でも、テロ後すぐJe suis en terrasse(私はテラスにいます)というスローガンと共にテラスで食事をする写真がアップされるのをよく見かけた。こういう文化的な「日常」を守る静かなる(いや、むしろうるさい?(笑))抵抗こそ実はすごく大きな意味を持つのではないのかと思った。

さきほどあげた記事の中の映像インタビューで、"Ma place est dans la salle"のキャンペーンのアイディアというのは、"de rassurer le public et dédramatiser la situation(観客を安心させ、現状を深刻なものとはとらえないこと(drameは悲劇という意味もあるので、悲劇的に考えない、あるいは、もう以前の日常は取り戻せないと悲観視する必要はない、という意味だと思う。)と述べられていて、パリの「日常」の日を絶やしてはならないという思いがここからも伝わってくる。

これから、パリの舞台文化はどうなっていくのだろう、とちょっと不安と希望とが入り混じった気持ちでこのキャンペーンのポスターを眺めてしまった。

↓#maplaceestdanslasalleのハッシュタグ。本当にいろいろな場所でこのスローガンが使われている。今こそ、団結を!との呼びかけ。





2015年12月13日日曜日

フレンチ・ミュージカルも国際化? 英語字幕付きで見られます!

仏ミューが英語字幕付きで見れる!そんな時代がやってきたようです。

Theatre in Paris.com - Experience French theatre plays with English surtitles
(シアター・イン・パリドットコム − 英語字幕でフランスの舞台劇を鑑賞しよう)
http://www.theatreinparis.com




というわけで、フランスの舞台を英語の字幕(surとなってるのは、舞台の「上」に出るから、だとか(解説)。subtitleの間違いかと思ったよ。。。)で見ることができるサービスができたようです。そんなに演目数はないようだけれど、ミュージカルだけでなく、ストレートプレイも観れるみたい。

英語でGuardian紙の記事にもなっているようです。
http://www.theguardian.com/travel/2015/dec/12/paris-theatre-augmented-reality-glasses-translation?CMP=share_btn_tw

例えば、現在パリのLe Comediaで上演中の1920年代のレビューの女王「ミスタンゲット」を描くMistinguett, reine des années folles

こんな感じで英語で舞台内容がわかる↓。

https://www.facebook.com/MistinguettOfficiel/photos/a.618426774878091.1073741828.617086191678816/937459279641504/?type=3&theater

この不思議メガネが一番気になりますが。。。↓のサイトでこの英語字幕サービスを申し込むことができるそうです。実際にこのサービスを利用した方によるとこのメガネは実は必要なかった疑惑(普通に字幕はFB写真のように舞台の上に流れていたらしい。)、、、だったそうですが笑。

→追記:上記の英語記事を読んだところ、 この不思議メガネは右側のレンズに字幕が映るメガネなそうなので、メガネ越しにはなるものの、舞台を見ながら字幕を追えるというメリットがあるそうです。確かに、日本で字幕付きの舞台を見ると字幕と舞台とで行ったり来たりするのが億劫で結局字幕放棄することも珍しくない笑。一時期話題になってたGoogleグラスよりもスクリーンが大きくバッテリーのもちがいいそうです。

http://www.theatreinparis.com/mistinguett.html

このサイトで申し込むと、
  • 字幕が見易い席にご案内(前すぎると却って見えないからね。。。)
  • 英語のプログラムをゲット
  • 観劇前に英語ができるスタッフによる舞台、会場の解説(この会場自体がとっても歴史ある建物で、ミスタンゲットも公演をしたことがある施設だから?)
  • ハイテク眼鏡でそれぞれ個人個人字幕を楽しめるシステムを試せる
といった特典がつくそうです。
したがって、舞台が始まる30分前には劇場に着いてる必要があるようです。

で、、、実際に行った方によると、これ、本当にこんな感じで超至れり尽せりな対応だったそうです。あのアンチ・イングリッシュなフランスで(英語が全然通じないというわけではないとはいえ、やっぱり仏語優位は圧倒的。。。)!しかも、non French speakersの観客もこのサービスのお陰か、結構いたそうな。

私は去年この劇をパリまで観に行ったのですが、、、自分とは大違い笑。
いやー、こんなサービスが導入されるとは夢にも思わなかったなあ。

というのも、、、実際にフランスでミュージカルをご覧になるとわかると思うのですが、観光客も多く観に行くオペラやバレエと違って、フランスにおいてミュージカルというのは、ほぼ完全に地元の人(特に家族や若者向け)向けの超ドメスティックなエンターテイメントなのです。。。したがって、外国人を観客とする発想がそもそもない。。。この点は、観光客の割合も多いブロードウェーやウェストエンドとはだいぶ違うと思います。

外国人を見かけることはほとんどないですし、仏語をわからんのに、なんでおるねん?ぐらいのプレッシャーを自分は感じました(ちょっと自意識過剰だったかもしれませんが。。。)。。。アジア系だとそれだけでかなり浮きまくります。

したがって、フランス語がわからない人にとっては非常に敷居が高いエンタメではないかなあと個人的には思っていました。エフェクトとかもちろん言葉がわからなくても面白いと思えるところはたくさんあるけれど、それでもやっぱり物語の詳細がわからないのは観ている側としては結構歯がゆい。自分も1789のときは、結局物語の全貌がわかったのは、DVDを真面目に解読してからでした。そして、えー!そうだったの??と驚くことたくさん。。。

そんな中でこんなサービス提供の開始のアナウンス。え?仏ミューもついに国際化、そして観光産業の一つとしての位置付けになったのかなあ?とちょっとびっくり。

でも、フランスのミュージカルって英語圏のものにはない良さがあると自分は思っているので、その良さを本格的にフランス側が世界にアピールしようと思って腰を上げてくれたというのなら結構うれしい気がします(そうそう、宝石は眠らせてはいかんよ!)。

そして、このサービス、フランス語がわからない or 聞き取りは難しい、でも英語がわかるというお客さんにとってはとってもうれしいサービスなのではないのでしょうか。舞台は、映画などの映像媒体と違って台本があるとはいえタイミングとかも微妙に毎回違ったり、調整がいろいろ大変そうですが、非仏語話者にとっては、大きな助けになりそうです。字幕はフランス語という言葉の響きの美しさ(これは仏ミューの醍醐味の大きな要素の一つだと個人的には思っている。)を残しながら、フランス語が十分に聞き取れない人にも理解できる手助けをしてくれるという意味でも本当に画期的なサービスだと思います。

ミスタンゲットはセリフが多く、結構早口だったので、仏語中級の自分にとっては、理解するのはかなーり厳しい舞台だったので、このサービス当時利用できたらいろいろわかったろうになあと思います。。。

もちろん、原語をちゃんと理解できるようになるのが一番ではあるけれど、そこまでたどり着くのは至難の技。そして、より多くの人にフレンチミューの世界の門戸が広がるというのは、すばらしいことだと思います。

今後サービスが広がることに期待。


2015年12月12日土曜日

2016年アルベール・コーエンさん 新作フレンチ・ミュージカル「赤と黒(Le Rouge et le Noir)」

十戒、太陽王、ロックオペラ・モーツァルト、1789 バスティーユの恋人たち等のプロデューサーであるアルベール・コーエンさんの2016年の新作のキャスティングが発表されました。

現在、パリの劇場Commediaで上演中の「Mistinguett, reine des années folles」をソロプロデュース中のアルベールさんですが、今回もソロプロデュースのよう。

題材はあのスタンダールの「赤と黒



フランス小説を舞台化ということで、とってもフランスっらしい舞台になりそう。キャスティング告知用のポスター(めちゃくちゃかっこいい!)にはNew Barock Opéraとあるので、ミュージカルといってもアチアさんと組んでいた頃のポップよりなものよりもクラシカルな歌い方に近いものになるのかな(そもそもミュージカルなんだろうか??)。。。

ミスタンゲットも、20'sの音楽をモダンにアレンジした歌を使っていたりしていて、若者がノリノリで楽しめる曲というよりは、大人が楽しめる舞台という趣向が強かったので、こちらもどちらかというと対象は大人向けの舞台になるのではないかと予想。ミスタンゲットもセリフ多めの舞台だったので、物語の内容的にもお芝居が結構出てくる舞台になるような気もします。

男女の愛憎劇。まさにフレンチが得意とする世界。

楽しみです。

2015年12月5日土曜日

1789 バスティーユの恋人たち 東宝版キャスト発表!

1789 バスティーユの恋人たち、ついに東宝版のキャストが発表になりました!

キャストや小池先生の談話

サイラモナムールの歌唱も披露。
東宝版でも書き下ろし曲があるとか。楽しみ。

上記のインタビューやこちらの記事でも出てきますが、小池先生がこのミュージカルと現代、そしてこれからの未来とのつながりを説明されているところが非常に興味深かったです。

もちろん、数週間前に起こったパリのテロがあったからこそ、ということもあるのだと思いますが、革命家、王家、普通の市井の人々、すべての人の物語であり、それが「人権宣言」に集約され、すべてはそこから始まる。そして、観客は、革命のその先に見えるものは?と問いかけられる…。それはもちろん、希望ではあるけれども、同時に大きな犠牲が伴う− これは、自分も舞台を見ながら感じたことだったので、非常に共感しました。



 現代にも決して無関係ではないテーマを取り上げているのもこのミュージカルの魅力。
オリジナルでオランプ役を務めていたカミーユ・ルーもテロ発生時、1789のPour la Peineの一節を取り上げていました。
ひょっとするとオリジナルより小池先生の方が、このミューの言わんとするところをきちんと捉えているような気がする笑。オリジナルは、この辺の「想い」を物語の流れとしてうまく表現しきれていないところもあるので、宝塚版に引き続き、そういった日本版の物語の緻密さは期待が持てます。同時に宝塚版ではいろいろ削られてしまったフレンチ的要素(ロナンの最期、女たちの描き方)がちゃんと描かれることを望みます。

しっかし笑ってしまったのが、フランスが描くフランス革命ということでもっとシビアなものかと思ってたら、ポップでノリのいい恋愛、青春ものだった、というくだり(爆)。小池先生、正直すぎます笑。でも、私も思った以上にエンタメ度が高いことには驚きました。でも、だからこそ、若い子たちも楽しんで革命を学ぶことができるし、そういった意味で親しみやすい作品なのではないかなと思います。

世界がより混沌とする中、また、この東宝版を見て、「人権」とは、市民の力とは?そういったことをまた改めて考えていきたいなと思います。

さて、配役を見ていると、宝塚版と同様、ロナン&オランプとアントワネット&フェルゼンのカップルが主軸になるというところは変わらないのかな、と思います。

小池くんのロナンってどうなんだろう、、、と思ってたのですが、予想以上にぴったり。童顔な感じが、名だたる革命家の中で孤軍奮闘し、時に抗う「若き農民革命家ロナン」を彷彿とさせます。個人的に、Rêve du paysan !(どうせ、農民の夢だよ!)とデムーランに怒りをぶつけるシーンが結構好きなのですが、そのシーンを演じている小池くんを妄想してしまいました笑。期待。

そして、衣装ですが、、、すごくアース・カラーに近い色になった気が(笑)。特にロナンや革命家たちの衣装。宝塚版では、オータムカラーへシフトして、渋い色合いになったなあと思ったのですが、それがさらに加速(笑)。私は、オリジナルの鮮やかな衣装がフランスっぽくて結構好きなのですが、農民の役なので、こちらの方がリアル感があるといえばあるかなという気がします。いずれにせよ渋カッコいい素敵な衣装だなと思います。

逆にオランプはオリジナルよりちょっと豪華&派手な感じ?オリジナルなちょっと地味目な真面目ガールな感じは残しつつも、衣装がより重厚感がある豪華な仕上がりな気がします。

アントワネットは、お二人とも宝塚ご出身の方ということで、おー、ぴったり。そして豪華だ!笑。宝塚版のときもそうでしたが、日本版はオリジナルの人よりもだいぶ、ベテランの方が演じるので、すごく気品溢れた大人の色香が広がるアントワネットだなと思います。

そして、宝塚版で異彩を放っていたアルトワ伯!!!宝塚版、お耽美系をきちんと踏襲し、セクスィーな魅力がすでに溢れ出ていますw 日本版で独自の進化を遂げたキャラ、東宝版でも必見です!

いやはや、来年の春が待ち遠しいです。