というわけで、いろいろな意味で夢のような時間を過ごして充実感に浸りつつ(その時の感想はこちら)日本に帰国した自分だったが、ランボーのことに関してちょっとだけ心残りだったのは、実は、本は渡したけれど、肝心のミュージカルについては一切何も聞けなかったということだった(状況として悠長にお話をしているような雰囲気ではなかったので、まあ、仕方がないといえばそうなんだけど…。)。
当時のポスター?
登場人物はこのポスターに出てる6人だけです。
2007年の公演の様子の写真はこちらにいっぱい掲載されています。
ガラコンから帰国後、日本人のファンの人とTwitterでやりとりをしていると、たまたまリシャールが、日本語の(!)コメントに反応をしているのに気づく(単語だけ確かに英語だったけど。。。)。
内容は他愛のないもので、スタローンのランボーと詩人のランボー、名前は似てても中身はちょっと違うけど興味深いねー、というもの。リシャールはこういう面白ネタがけっこう好きなので、このときもそういう感じで反応していたんだと思う。
リシャールはTwitter等に意外と反応してくれることもあるので、思いつきで、「そういえば、どうしてランボーをミュージカルのテーマにすることにしたの?」とどさくさに紛れて聞いてしまう(このとき本当に質問に答えてくれるとは実は思ってはいなかったけど。)。
すると、リシャール。
「彼の作品はすばらしいし、彼の人生もしかり。
世界中で一番翻訳されてる詩人だよ!(→リシャール説。実際有名な詩人ではあると思うけど。)
テーマにするには最高だよ!」
とツイートをしてくれた。
ツイートが返ってきたというのは、望外の喜び(って言い方も微妙だけど苦笑)ではあったけど、でもリシャールがランボー大好きなのは知っているので(苦笑)、もうちょっと具体的に教えてほしいなあと思い、続けて「じゃあ、ランボーの詩、読まなきゃね。どの詩が好きなの?」と聞いてしまう。(→このとき完全に調子に乗っていたと思う(汗))。
すると、親切なリシャール。
「Showを見てくれることが彼の人生や作品を知るのにいい手がかりになると思うよ。何はともあれ、ヒューマン・ストーリーだから。」
と答えてくれた。
でも、これも具体性に欠けるというか、穿った考え方をすれば、自分のミュージカルの宣伝かい?(笑)と思わないわけでもなかったけれど(というか、リシャールは、それだけ自分の作品に誇りを持っている、ということの裏返しなんだと思う。)でも、最後の、大前提として「ヒューマン・ストーリー」だよ、というところがちょっと印象に残った。
ランボーといえば、少年時代から神童ぶりを発揮して、次々とセンセーショナルな詩を発表したかと思えば、年上の詩人のヴェルレーヌと愛の逃避行をしちゃったり(でもそのあとランボーにヴェルレーヌが発砲して結果的に別れてしまうけど。。。)、かなり早い段階で詩の創作を一切放棄して、アフリカで武器商人になっちゃったり…で、最期は、足に腫瘍ができて、37歳という若さで没してしまう…と「現実は小説より奇なり」を地で行ってしまうような生涯を送った人だ。
というわけで、何かとその「特異性」だったり、「アバンギャルドさ」みたいなものに目を向けられがちだけれど(実際自分も最初そうだった。)、こういうextraordinaryな人にも普通のどこにでもいる10代の少年のピュアさだとか普通に恋に悩んじゃったりとか、1人の「人間」としてのストーリーがきっとあるんじゃないかなという気が、リシャールの「human story」という言葉を見てした。
と、ここまで調子に乗ると何だか悪い気がしたので、とりあえず質問はここで止めて、「アップデートよろしくねー。」と送ると「いつも応援してくれてありがとう!ちゃんとアップデートするよ。」とまた律義にリシャールは答えてくれた。
このやりとりのあと、自分があまりにもランボーについて知らないので、ちょっと調べてみたり、ランボーのミュージカルについての情報をちょこちょこ集めてみた。
が、ミュージカルに関する情報が如何せん少ない。
Richard Charest (3)でも述べたように、 オフィシャルと称するサイトは確かに存在するが、
http://rimbaudmusical.free.fr/site/
映像や肝心の音源がほとんど存在しない。
Rimbaud Musical のmyspaceのページ
http://www.myspace.com/rimbaudofficiel
にいくつか音源の抜粋は載っていたけれど、それもごくごく一部。
で、ほぼ曲が全部入っていると思われる珍しい映像がこちら2つ。↓
Sauver les apparences (対面を保つ、取り繕うの意味)
ガラコンで聞いた曲。
フィギュア・スケートのショーのBGMとして使われていたらしい。
歌っているのは、ヴィタリー(ランボーの母)役のSophie Delmasさん&マチルド(ヴェルレーヌの妻)役のLucie Bernardoniさん。
Sauver les apparences (対面を保つ、取り繕うの意味)
ガラコンで聞いた曲。
フィギュア・スケートのショーのBGMとして使われていたらしい。
歌っているのは、ヴィタリー(ランボーの母)役のSophie Delmasさん&マチルド(ヴェルレーヌの妻)役のLucie Bernardoniさん。
Charleville, mon soupir(シャルルヴィル、私のため息(soupirには恋の悩み、恋慕の情、哀歌という意味もあるので、こっちかもしれない。。。)
歌っているのは、ランボー役のJonatan Cerrada。 たぶん、2007年のソルボンヌでの公演か、公開リハかの映像。実は、NDPの公演中に初めて聞いた曲はこれ。ランボーがおそらく家出したあとパリで自分の出身地であるシャルルヴィルのことを考えながら歌っていると思われる曲。
というわけで、とりあえず、これらの曲を聴きこんでみる。
で、そのほかの曲もまあ、一部ではあるけれど、どういう部分にスポットを当てた曲なのかぐらいはわかるかと思い、こちらも一応、聞いてみることにする。
歌詞がないので、正直、半分も正確に意味は取れていないとは思うけど、パーツ、パーツで意味が取れた部分から全体の歌の雰囲気を推測することはできるので、総合して考えると、どうやら、ランボーとヴェルレーヌの恋愛話だけにスポットが当てられているだけでなく(この話は、ディカプリオがランボーをやっていたTotal Eclipseなど、ランボーというとこの話がメインになることが結構多い?)、ヴィタリーやマチルドなどの女性陣も結構活躍してるっぽい=ランボーを軸にして幅広く話を取ってきてるっぽいという気がした。
あと、最近のフレンチミュージカル(ブロードウェイやウェストエンドの翻訳版ではなく、フランスオリジナルのという意味で)の中でも、いわゆる今年のミュージカル、みたいな大型の話題の作品というのは、ターゲットの客層が何となく若者(主にティーンエージャー)な気がしていて、だからなのか、曲がミュージカルというより普通のポップ?というようなものも多い。というわけで、大人(mature)な観客からするとそれがちょっと残念と思うこともあったが、ランボーは私が聞いている限りでは、確かに、ポップやロックみたいな現代的な音楽の要素はありつつも、それでも、曲の物語性というか、ミュージカルっぽさというのはちゃんと残している楽曲だという気がした。
このあたりまで調べると、さらに、面白そうな作品だ、という気がし、FB経由で曲の内容についてリシャールに尋ねてみたら答えてくれるのではないだろうか、とふと思いつく。あんまり、事細かに聞いたりするのはちょっとまずい(さすがに調子に乗りすぎ。。。)とは思ったけど、リシャールは、基本的にこちらが真面目に聞いているとわかるとちゃんとそれをわかってくれる人だし、Twitterの反応を見ても、自分のミュージカルに興味を持ってくれるというのはそれほど嫌ではなさそうなので、マナー違反とまではいかないのではないかと思った。
実は、Rimbaudのミュージカルは、リシャールが一人で作っているのではなく、アルノー・ケランさんという友人と一緒に作っているミュージカルだったりする(詳しくは他の投稿に書く予定。)。
全く面識のないアルノーさんにメッセージ等を送るのは果たしてどうなのだろう?という気もしたが、詞についての感想(アルノーさんは作詞家)も含んでいたし、このミュージカルは明らかに二人の作品だということがわかっていたので、アルノーさんとリシャールの二人に曲の感想(というか、歌詞の内容はこんな感じでしょうか、という半分質問。)と、ミュージカル楽しみにしています、みたいなメッセージを送った。
すると、二人とも、すごく丁寧な返事を返してくれた。一部を抜粋すると、
リシャール:
僕にとって、とても大切なプロジェクトについての感想を伝えてくれるために時間を取ってくれてありがとう。いつか日本の人たちの前で公演ができたら、と強く願っているよ。
アルノーさん:
僕たちの物語(histoire)である曲を聴いて、理解してくれるなんてすばらしいよ。リシャールと僕はこのミュージカルにすごくたくさんの情熱を注いできたんだ。この公演を気に入ってもらえたらうれしいよ。
二人とも恐るべき親切&丁寧な方。。。特にアルノーさんが見ず知らずの日本人に、こんなにちゃんと答えてくれるなんて想像もしてなかった(無視される可能性も高いと思っていた。)ので本当に驚いた。
そして、このメッセを読んで、二人がいかに情熱を傾けてこのプロジェクトに取り組んでいるのか、ということを改めて実感した。=リシャールがソウルでなぜあんなにも輝いていたのか、わかった気がした。
最初こそ、リシャールが作ったミュージカルだから、という理由でランボーのミュージカルに興味を持ったけど、個人的にランボーという人間やそのドラマについて結構興味深い気がしたので、来年の公演までにいろいろ前もって勉強できてればなあと思う。