2013年11月17日日曜日

1789 Les Amants de la Bastilleのsaison 2と爆発事故

11/7から、実は、1789 Les Amants de la BastilleのSaison 2が始まった。新曲も加わったり、去年の公演とはかなり違うものになる、という話だったので、自分はパリには行けないけれど、映像を見るのを楽しみにしていた。出演者も降板した人たちも含めて、いざ、革命!みたいな感じで、ファンもそれに応えて、いよいよ幕開け、となった。初日は、いろいろな改変も含めてかなり盛況だったようで、単なる観客の一人でしかない自分も何だかうれしかった。

そして、その次の日に起きた爆発事故。
新しいミュージカルが始まると、たいていミュージカル仲間からお祝いのことばのツイートやらFBコメントがでる。この日、FBを見ていたら、NDPのメンバーやR&Jのみんなが1789について言及していて、最初は、オープニングおめでとうメッセかと思った。でも、よく見ると、tristeとか明らかに悲しいことが起きたときにしか出てこない言葉が並んでいた。

事件が起きたパレ・デ・スポー。真ん中のドーム上の建物

そして、ステージ系のニュースを発信しているRegard en Coulisseのニュースでどうやら1789の公演が行われているPalais des Sportsでリハ中爆発が起き、重傷者が出ているということを知る。しかも、映像を見ているといわゆるボヤというようなレベルではなく、かなり大きな爆発だったらしい、ということが感じられ、ちょっとぞっとする。

私が知った時点で爆発からすでにけっこう時間が経っていたようで、出演者たちは、それぞれ、私は大丈夫メッセージを発信していたので、それはほっとしたのだが、記事を読んでいると、心肺停止のスタッフがいるということが書かれていて、すごく気になった。(日本語でも記事になった(http://www.jiji.com/jc/zc?k=201311/2013110900248&g=int)。まさか、日本語で「1789 バスティーユの恋人たち」という文字をこんな形で見るなんて夢にも思わなかった。)

そして、本当に残念なことに、このスタッフの方は病院でその後、亡くなってしまった。
亡くなったMarcus Toledanoさん。タイトルがChef plateauなので、たぶん、舞台セットのチーフの方なのだと思う。

もちろん、私は舞台を見た一観客にしか過ぎないし、Marcusさんを直接知っているわけでもない。
でも、この舞台は、私にとっては、単なる舞台(=エンターテイメント)ではなくて、記念すべきミュージカル初海外遠征の公演と言う意味で思い出深い舞台だし、フランス語がまだかなりできない頃に、いろいろ自分なりに調べて、舞台を見終わってからも、その成長を見守っていた舞台でもある。
から、そういう意味で、この事故のニュースは本当に悲しかったし、他人事とは思えなかった。

さらに、この舞台で一際感動したのが、やはり舞台演出だった。特に最後のバスティーユ陥落のシーンの舞台セット(Mon histoire (3)で載せた映像(http://www.youtube.com/watch?v=AjTG1LUks8M)を参照。)は本当に迫力があったし、Tomber Dans Ses Yeuxのくるくる回るセットやLa guerre pour se plaire のときの背後の素敵な石像はすごく印象に残っている。

そして、Nous ne sommes の最後の派手な発砲シーン。ここで使われている火薬が今回の事故と直接関係があるかはわからないけれど、やっぱりこのシーンは最初見たときリアルに驚いたし、まさにスペクタクル!と感じた場面だった。でも、そんな火薬が人の命を奪うことになったのかと思うと、何だか、それを楽しんだ自分にちょっと罪悪感を感じてしまう。(実際問題は火薬自体ではなく、管理だったり、不運の重なりということなのかもしれないけれど。)


 La guerre pour se plaire
ダンサーたちの後ろで青白い光に照らされた石像が美しかった。 
Tomber Dans Ses Yeux
 歌手やダンサーたちがくるくるまわる。


Nous ne sommes
後ろに写っている兵士たちが最後一斉に発砲する。
まだ、事故の完全な原因究明は終わっていないようだけれど、いろいろなニュースを総合すると、どうやら、舞台の機器が破損したか何かで火花が出て、それが火薬に移って爆発したというようなことのよう。不慮の事故とはいえ、まさにこれからSaison 2が本格的に始動するという矢先に亡くなってしまったMarcusさんは本当に無念でならないと思う。

1789には、"Fixe"という曲がある。シングルカットもされてないし、他のシングルカットをされた曲のようにキャッチーな曲ではないが、私は、個人的にこの曲とカーテンコール曲であるPour la Peineが一番このミュージカルの本質や訴えたいことをダイレクトに伝えている、ベストチューンだと思っている。
【ここからネタバレ】
場面としては最後のシーンで主人公の革命家の青年が銃で撃たれて死に、そのあとに歌われる。そして、曲の最中で、シンガーやコメディアン(俳優)やダンサーたちが人権宣言の一節を読みながら方々の会場のドアから次々と入ってきて、舞台に上がってきて最後に一列に並んで合唱するという演出がある。

詞が難解(少なくとも自分には。)なので、この歌ってこんな感じときちんと表現するのは難しいのだが、革命の道半ばで命を落とした主人公の青年の思いを代弁するような曲になっていて、人の命の尊さ、儚さ、革命の犠牲、無情さについて語った歌だと思う…。
【ネタバレおわり】

※ネタバレ注意※
Fixe。このRod Janoisが熱唱するところが本当に好き。
メロディーもいわゆるミュージカルという感じで
ちょっと重厚感がある感じでよい。
革命ってなんだったんだよ?と問いかけられている気がした。
作曲は歌っている本人であるRod。
Rodが作るミュージカルの楽曲(Roi SoleilやMozartなども含めて)は、
どちらかというとキャッチ―というよりきれいめで観客に訴える感じの曲が多くて好き

この歌の一節に以下のような歌詞がある。


Nous sommes fragiles
Nous sommes l'argile
Nous sommes
Un avenir incertain

Nous sommes utiles
Nous sommes futiles
Nous sommes
Le destin entre nos mains

英語だと、

We are fragile
We are the clay
We are uncertain future
We are useful(→直訳だとこうだけど、ちょっと変かも。)
We are futile(→直訳だとこうだけど、これもちょっと変かも。)
We are the fate in our hands

なので、

私たちは、儚く
私たちは土であり、(argileは粘土のことだけど、聖書の土から人間が作られた、とかそういうのと関係?それか、粘土みたいな塵のような存在。とかそういう人間の小ささを表現?)
私たちは不確かな未来である。

私たちは、有用で、
私たちは無力で、
私たちは自らの手の中にある運命である。
(Nous sommes が、「私たちが」という訳でいいのかちょっと謎だけど、でも文字通りだとこうなるはず。)

韻を踏んでいるので、ことば全てにかっちり意味があるとは限らないけど、それでも、この歌詞は、まるで、今の1789のメンバーたちの気持ちを代弁しているかのような歌詞だと思う。

ミュージカル自体も、ルイ・デロール演じるロナンのような普通の青年が人権を求めて立ち上がり、そういった行動が人権宣言だったり、バスティーユ監獄の陥落といった世の中の大転換につながるものの、最後に彼は、新たな時代を見ることなく、命を落としてしまう。

人の命は本当に儚い。

しみじみそう感じた。

事故から数日経って、上記のカミーユ・デムーランを演じているロッド・ジャノワ(自分は、1789の歌手の中では彼が一番好きだったりする。)が事件についてのインタビューに答えていた。

インタビュー記事(フランス語)→http://www.lemainelibre.fr/actualite/interview-rod-janois-nous-voulons-tous-que-1789-reprenne-12-11-2013-71436

彼は、爆発の際に吹き飛ばされ、その衝撃でacouphènes aiguës(急性の耳鳴り)が起こってまだ残念ながら耳の状態は良くないよう。(彼は、作曲などをするクリエイターでもあるので、これはかなり深刻な話だと思う。)

彼によれば、まだ、捜査中ではあるけれど、今回の事故は、いつものメンテナンスを行っている最中に起こった"Un banal accident du travail"(common accident of the work(一般的な職務上の事故(労災と訳せばいいのかな。))なので、火薬の演出自体の安全には、問題ないとのこと。Marcusさんの名誉のためにいうと、今回の事故は安全を十分に確保した上で起こった不慮の事故、ということをロッドは強調している。

爆発は2回起き、彼は、1回目の爆発が起きたときに悲鳴が聞こえたので、けが人を助けようと地下に行こうとしたところ、2回目にさらに大きな爆発が起き、彼はその爆風に吹き飛ばされたものの運よく衣装を入れていたケースのお蔭で無事だったとのこと。

また、会場の修復状況や捜査の進展にもよるが、少なくとも舞台は11/28まで延期となる予定だが、当初予定されていた1/5までちゃんとやるとのこと。出演者もショックを受けているが、みな舞台の再開を心から願っているし、Marcusさんのためにも再開しなければ、という言葉を寄せている。

ただ、やはり、安全上というよりも出演者の心理状況から、火薬を使った演出はしない方針になるのではないかというようなことも書かれていた。(実は、私も、この点はどうなるのだろうと思っていた。)銃などの演出は電気や音で代用はできるので、これは、当然の判断だと思う。

Marcusさんは、実は、NDPでもスタッフをしていたことがあるそうで、NDPメンバーからも追悼のコメントがいっぱい出ていた。本当に愛されていたスタッフだったんだと思う。

いずれにしても、1日でも早く怪我をしたスタッフが回復して、1789の舞台が再開することを心から願わずにはいられない。



2012年12月、パリでの公演にて。

登場人物についての紹介はこちら
その他の楽曲についてはこちら
事故からの復活後の様子についてはこちら


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