2014年2月15日土曜日

The Beautiful Game鑑賞 ~ベルファストの思い出~

実は、それなりに準備をしている記事があるのだが、ちょっと時間がかかりそうなのでまたつなぎの記事(苦笑)。
若干番外編になるが、ちょっと前、The Beautiful Gameを見た。普段、日本語で上演されるミュージカルはあまり観に行かないのだが、今回、テーマが北アイルランド紛争ということで、興味を持ち、観に行くことにした。

実は、自分は、昔、アイルランドやアイルランドの音楽、歴史にハマっていたことがあり、大学のイギリスの語学研修に行ったときに、週末を利用して、クラスメートと一緒にアイルランドにshort tripに行った。しかし、一緒に行ったクラスメートは台湾人で、台湾は、アイルランドと国交がなく、万が一トラブルに巻き込まれるとまずいので、英国領である北アイルランドのベルファストに行くことになった。
バルコニー席から。
わかりにくいが、この壁のセットの後ろにも客席があり、
この街の「対立」をよく表している。

もちろん、ベルファストは内戦があった場所だったことは知っていたし、アイルランドの血なまぐさい歴史も、それなりに背景知識としては知っていたつもりだった。とにかく、アイルランドの歴史と言うのは、2000年に入るくらいまでは、貧困、移民、英国からの独立までの戦い、分裂、内戦、紛争、等々暗い話ばかり。。。でも、自分は、そんな悲惨な物語の中に、人間の哀しさだったり、そういう背景があるからこそ、あのような素晴らしい音楽の文化が存在するのだと、一種の歴史の深みのように捉えているところがあった。

だが、これは実際に、ベルファストの街を歩き回って、こんな甘っちょろい考えは、持ってはいけなかったのだと感じる。

ミュージカルの中に出てくる若者たちが、この街には何もない、とにかく、この街を出ていきたいと心のうちを吐露するシーンが出てくるが、私が行った2005年のときでさえ、この街には、未来というものの明るさがほとんど感じられなかった。街の雰囲気がとにかく荒んでいる。その雰囲気にとにかく圧倒された。平和ボケしている自分をすごく恥じた。

 
 
郊外。
 

この写真を見ているとあの荒んだ空気を今も思い出す。

ベルファストにはこのように政治的なプロパガンダが
書かれたpolitical muralsが当時でも至る所に残っていた。
これは、見てもわかるようにプロテスタント側の地区。

こんなものを日常的に見ながら生活するってどんな
気持ちなんだろうと思わずにはいられなかった。

ユニオンジャックがこれ見よがしに掲げられていた。 

 
ツアーに行ったときに、ガイドのおじさんが、このバーは
テロに遭ったため、このようなケージが付けられたのだと
説明してくれた。背筋がゾクっとした。この街では
暴力は、歴史ではないのだと思い知らされた。
 
しかし、海は、本当にエメラルドグリーンで透き通っていて
美しかった。街の暗さとのコントラストに、唖然とした。
 
さて、私のプチ思い出はここで終わりにして、本題の舞台。
 
ストーリーとしては、暴力の応酬の無益さをサッカーチームでチームメートだった若者のそれぞれの人生を追いながら、問いかけるというもの。タイトルのThe Beautiful Gameは、このチームが宗派やそれぞれのイデオロギーの違いを抱えつつも、優勝を収めた最後の試合を示しており、それぞれの若者たちにとって最も幸せだった瞬間を象徴している。(というか、この幸せな瞬間が写真として、何度もリフレイン的に登場し、その後のそれぞれの若者を襲う悲劇をより鮮明なものにしている。)
 
初台の新国立劇場には初めて行ったが、小劇場だったので、会場はこじんまりとしていて、一番後ろの席から見ていても舞台が全く遠く感じなかった。そして、舞台は360度観客が入るようになっており、舞台も両サイドの観客に向かってダンスが作られている等の演出がなされていた。また、キャストたちが客席も使って演技をする(人によっては真横でキャストに歌ってもらえる。)シーンが数多くあり、まさに、観客、キャストが一体となって舞台のなかにいるという感じがして、とても良かった。
 
キャストの人たちも恥ずかしながら、全然知らないまま見に行ったが、みな自分と同世代ぐらいの人が多くて、若者のフレッシュさ、エネルギッシュさを感じられてすごく瑞々しい舞台だった。歌も、みんな上手だった。
 
また、サッカーシーンなどでの群舞もキレがあってとても良かった。
 
あと、もう一つ面白かったのが衣装。どの衣装もよく見ると、アイルランド側の人たちの衣装には緑色がどこかに入っている(真っ白なはずのウェディングドレスや真っ黒な神父の服にまで。)。ある意味この演出はモダンというか、見ていてスタイリッシュに感じた。
 
曲としても泣けるシーンや、まさに私がベルファストに行って感じたあの何とも言えない「哀しい」感じを思い出すシーンがいくつもあったのだが、なぜか、アイルランド関係の映画(「麦の穂を揺らす風」とか「マイケル・コリンズ」とか。ちょっと時代は違うけど。)を見たときよりは、グッと来なかった。でも、周りで泣いている人はいっぱいいたし、自分でもなんで感動に入れないんだろうと不思議に思ってしまうぐらいだった。
 
思うに、やっぱり現地の印象が強烈すぎて、やっぱり、日本でアイルランドを語るっていうのが、ちょっと「平和」にやっぱり見えてしまったからなような気がする。あと、北アイルランドの対立は、カトリックvsプロテスタント、と紋切り型に割り切れるものではなく、さらに入り組んだ複雑なものだったりするので、そのあたりを北アイルランド問題になじみの薄い日本で全部表現するというのはやっぱり難しいなという印象を持った。
 
でも、舞台としては本当によくできていたと思うし、同年代のキャストたちが精一杯、演技をする姿にはすごく勇気をもらえた。
 
日本語だからと食わず嫌いをしないでこれからはいろいろやっぱり見に行こうと思った。というか、観に行けるといいな(財布と要相談だけど。。。)。

0 件のコメント:

コメントを投稿