2015年5月5日火曜日

祝!宝塚上演記念: 1789 Les Amants de la Bastille バスティーユの恋人たち 〜 プロデューサー Dove Attia氏 インタビュー

ちょっと古いですが、2013年(フランス当地では、最初のパリ公演が終わりツアーをしていた頃と思われます。)にプロデューサーの一人であるドーヴ・アチア(Dove Attia)さんが「1789バスティーユの恋人たち」について語っているインタビューが面白かったので、ご紹介したいと思います。

宝塚の公演の初日にはどちらかのプロデューサー?が観劇に(というかチェック?)いらしてたとか(アチアさんは今自分のミュージカルの準備に忙しいはずなので、アルベールさんが来ていたのではないかと想像するのですが…。)。フランス人だったから結構目立ってたそうですね(笑)。うー、ちょっと遠めからでも拝見したかったです><

右側がDove Attiaさん。左が1789まではずっと一緒に
製作をしてきたAlbert Cohenさん。が、しかし、どういう事情
なのかはわかりませんが、現在アチアさんは今年上演予定の
Roi Arthur(アーサー王)を製作中で、アルベールさんの方は
Mistinguetteというミュージカルを絶賛上演中です。
これからまた2人で一緒に仕事をするのかわかりませんが、、、
きっとお互いまたポップな作品を作ってくれるのではないかと思います。
(追記:ちょっと調べてみたら、2人は仲間割れ(爆)したわけではなく、
1789の公演時に爆発事故が起き(スタッフが1人亡くなっています。)
アチアさんはそれで疲れきってしまい一時休みが欲しいということで
(当時のアチアさんは、本当に映像で見ても憔悴しきっていました・・・。)、
しばし休養していた模様。
で、アルベールさんの方はその間に自分がずっとやりたいと思っていた
Mistinguetteの方のプロジェクトをやることになった、ということのようです。なので
数年したらこのコンビのミュージカル、また復活するかもしれません。)
原文のフランス語記事はこちら↓。


1789ができた経緯はもちろんですが、キャスティングの方針、ツアーで成長するキャストたちについて、フランスのミュージカルを取り巻く状況など、フランスに限らず日本のミュージカルでも共通することも結構書いてあり、そういう意味でも興味深い記事かなと思います。

あんまり考えたことなかったことなんですが、、、このミュージカル、作られたとき、フランスは不況真っ只中だったんですね、そういや。その中で「革命」のアイディアが浮かんだというのは確かにわからなくもない。。。資金面での大変さ等、結構リアルな話も多いです(笑)。

一応、アチアさんの略歴(1789のサイトWiki情報より)。

1956年11月30日生。出身はチュニジアのチュニス。フランスの名門校の一つであるエコール・ポリテクニークに在籍。数学や物理の先生をしていたこともあったそうです(今経歴を読んでびっくりした。。。アチアさんバリバリの理系だったのね。。。)。しかし昔から持っていた音楽の道への情熱は抱き続けていた模様。その後TF1 Internationalやハイテク企業の社長さんなども歴任されていたようですが、アルベールさんと出会い、映像系の仕事を一緒にしたりする中で、ミュージカルの道へ(何でミュージカルなのかは結構謎ですが笑。)。2000年以降、アルベールさんとともに数々のミュージカル・ヒット作を生み出す。 Nouvelle Starという有名な音楽番組(アメリカン・アイドルのようなタレント発掘番組だと思います。)のジャッジを長年務めていたことでも有名。

作品:
・「十戒(Les Dix Commandements)」(2000年)*
・「風とともに去りぬ(Autant en emporte le vent )」 (2003年)*
・「Les Hors-la-loi(アウトロー)」(2007年)
・「Dothy et le Magicien d’Oz(ドティーとオズの魔法使い→フランス語でドロシーはDorothée(ドロテ)となるはずなのですが、このミューではドティーだった模様。愛称かもしれません。)」(2009年)*
・「ロックオペラ・モーツァルト(Mozart, l'opéra rock)」(2011年)
・「1789 バスティーユの恋人たち(1789, les amants de la Bastille)」(2012年)*
・「La légende du Roi Arthur (アーサー王の伝説)」(2015年上演予定)
*は、アルベール・コーエンさんとの共作。   

はい、つまり、フレンチ・ミューヒットメーカーさんの一人であることは間違いありません。。。
ロワ・アルチュール(アーサー王)も 、モーツァルト(フラ語だとモザール)でサリエリを演じていたFlorent Motheをアーサー王に、グィネヴィア役に1789でオランプを演じたCamille Louを据えての公演なので、きっとこちらもヒットするのではないかと思います。

今年秋パリで公演予定の「アーサー王の伝説」はこんな感じ。
こちらもかなりポップな仕上がり。

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モルガンヌ・L(以下ML(インタビュアー)):どのように「1789 バスティーユの恋人たち」のミュージカルを創るというアイディアにたどり着いたのですか?

ドーヴ・アチア(以下DA):無意識のうちに、この一つ前のミュージカルであるモーツァルト・ロックオペラの最後の曲で思いついたんだと思う。「C'est bientôt la fin de ce monde qui n’entend rien(聞く耳を持たない(何も理解しない)世界はもうすぐ終わる)」は既に革命についての歌だったから。もちろん金融危機のスキャンダルはみんなと同じように少々ショックだった、世界はなんてクレイジーになってしまったんだと思ったのさ。そこで、フラッシュのようにイメージが、1789のヴィジョンが、頭の中に浮かんできたんだあらゆる世代の人々が世界を変えようと夢見た時代のヴィジョンをね。今日でも、こういったテーマは我々一人ひとりにとって語りかけてくるものだけれど、アイディアが思い浮かんだとき、どんなものであれ商業的な理由といったものは一切頭にはなかったんだ。意外に思われるかもしれないけれど。かなりうまくいっているのだとしたら、それは僕らが少し(ヴィジョンを)先取りしてその後、世間の流れに乗った、ということなんだと思う。

ML: このミュージカルは準備に約2年間かかったそうですね?

DA: だいたいそれぐらいだね!1年を台本を書くのに費やしたよ。だからアルベール(・コーエン)と多くの時間をすごさなければいけなかった!シナリオを作り上げるのには時間がかかったよ。というのもまさにフランス革命の歴史(に取り組む)ということが仕事の大半だったけれど、舞台に55人もの人を乗せる場合には、たくさん注意を払わなければいけないからね。

「1789 バスティーユの恋人たち」は、本当に大きな機械みたいなものなんだ。でも、こういった類のチャレンジは、モチベーションにもつながるし、極限をさらに押し広げてくれるものでもある。そして今度は、「物理的に」物語を描くために丸1年を費やさなければいけなかった。イメージしていたものを具体的な形にしていかなればいけないからね。つまり、ヘアやコスチューム(このミュージカルでは約450着あるんだ。)そして素晴らしい舞台装置といったものだ。でも、こういったことが可能だったのは、僕たちがアルベールを含めてお互い本当の家族であったからこそなんだ。僕たちは長い間一緒に仕事をしてきたから、舞台でできあがるものは、統一性があるんだ。

ML: ところで、そのアーティスティックな「家族」でロッド・ジャノワは何年もの間、スタッフとして作品に関わってきましたが、今回はカミーユ・デムーラン役として舞台にカムバックしましたね?

DA: そう、ロッドは何度もロワ・ソレイユやロックオペラ・モーツァルトなどで仕事をしてきた。で、テストとなる最初のデモテープを録音をしているときに彼が本当にすばらしい声の持ち主だと気づいたんだ。 「モーツァルト」のときに既に舞台に立って欲しいと思っていたんだけど、うまくいかなかった。彼の才能のせいということではなくて、彼のパーソナリティーのせいでね。どの役も彼にいまいち合わなくて。毎晩演じていて真実味があって明らかであるために、演じる人が演じる役に近いということは必須条件なんだ。カミーユ・デムーランの特徴が浮かび上がってすぐ、僕たちにはわかったんだ、僕らそして、他のチームのみんながこれは彼のための役だって感じたんだ。ロッド・ジャノワはこの役に理想的な精神的要素を持ち合わせている。(1789の時代の)衣装やその時代を除いて、まさにこれは彼なんだ(笑)。

Rod Janois(ロッド・ジャノワ)。
この人、ほんと歌うまくて、よかったです。
 ロマンティックな雰囲気がデムーラン っていうのも納得でした。

ML: 俳優や歌手をキャスティングするというのは最も大変な作業の1つなのではないでしょうか?何ヶ月もの間ある役を見事に演じきることができる人を探さなければいけませんから。


DA: うん。よく、歌うのがうまい人を選べば十分でそんなことは簡単だと思われがちだけれど実際には違う、もっとそれ以上のものなんだ。彼/彼女自身の人生の一部を僕らと分かちあってくれる人と出会う、そういうようなものなんだよ。だから僕たちは登場人物の生き生きとしたリアルな片割れのような人を探し出すことに成功しなければいけないんだ。これは本当に大きな賭けで、これはたびたびミュージカルの失敗の原因になったりもする。どの役も既に実際の生きた体験を持ち、性格や感性が登場人物と一致している人に行き着かなければいけない。経験というのは、何ヶ月にも渡って毎晩、登場人物に命を吹き込むことができるという意味で、本当に大事な条件なんだ。特に、もともと彼らは歌手で役者であるとは限らないからね。



ML: プロジェクトが始まって、登場人物になりきれるようになって、「1789バスティーユの恋人たち」のアーティストたちに何か進歩のようなものは感じられますか。

DA: あー、もちろん!例えば、ルイ・デロール(*主役のロナンを演じた男の子)の場合は、彼がチーム内に合流したのは、数ヶ月前で(*主役予定だったマチュー・カルノーが喉のトラブルで開演数ヶ月前に突然主役を降板したため、ルイは他の歌手よりもだいぶ遅れて開演間近の段階でチームに合流した(他のメンバーは、プロモーションなどで既に1年ほど一緒に活動をしていたので、まさに落下傘部隊のような感じでの合流だったのだと思います。。。*)。)、彼はまだ18歳の子供でしかなかったけれど、今は、もちろん感覚としては同じ年だけれど、彼はひげを生やしているよ!(笑)彼は成長して、成熟したね。彼はものすごく変わったよ、特に心理的な面でね。4,000人の(観衆の)前で数ヶ月の間、毎晩、腹の底では恐怖を抱えていた人間からは大きな違いだよ。そして、ルイはその一例でしかない。どのアーティストも進化を遂げているし、変化していって、その後どんどん自身が演じる役に近づいていく。そして公演を重ねていくうちに、だんだんと「演じる」ことが少なくなっていって、役そのものになっていくんだ。そうすることで、より自由になって自分自身により確信を持てるようになって、今度は逆に、彼らが演じる役を豊かなものにし、立体感を与えることができるようになるんだ。


ルイ・デロール。18歳には見えなかったなあ笑。
まあ、向こうの子は大体そんな感じですが。
ML: ツアーはこういった変化に貢献しているんでしょうか。

DA: もっといえば、今彼らがちょうど地方で経験しているツアーはそういった成長を後押しし、いろいろなものを明らかにするものとして働いていると思う。こういった場は、さらに役者たちを成長させるすばらしい舞台なんだ。彼らはパリにいたときよりも断然良くなったよ。というのもツアーは舞台に立っていないときでもずっと続くライブのようなものだからね。彼らはいつも(新しい環境に)適応しなければいけないし、新しい人に会いに行かなければいけないし、10倍(集中して)聞かなければいけないし、細かな部分までもっと注意を払わなければいけないし、安全地帯にあぐらをかきすぎてもいけない。毎晩彼らは良くなっていくけれど、たとえものすごく働いても彼らはリラックスする方法を知っているから大丈夫さ。僕らはこのツアーを本当にすごくエンジョイしているよ!

ML: あなたは、これまでの全てのミュージカルの並外れた成功で有名になりました。「ロックオペラ・モーツァルト」はもちろんすぐに思い浮かびますが、それ以外にも「太陽王」、「十戒」なども思い浮かびます。それでも、このミュージカルを始めるに当たって、不安な気持ちになったことはあったんでしょうか。

DA: もちろん恐怖や不安な気持ちになるときはあったよ。ミュージカルの世界において、企画したこと全てにおいて、前もって獲得できるものなんて何もないんだ。観客は僕らを待ち望んでいるだけだと僕らが思っているのだとしたら、まったくのうぬぼれになってしまうよ(笑)!反対にこのミュージカルを披露したとき、僕らはとても大きな競争に直面するんだ。本当に厳しい競争にね!アダム&イヴ、シスター・アクトあるいはサリュー・レ・コパン(*これらは、私が1789を見に行った2012年の秋〜冬にかけて実際に公演が行われていた演目です。確かに、他の演目も皆人気がありそうな感じでした。おわかりのように、シスター・アクトのように、フランスでも毎年翻訳版(特に英語圏)のミュージカルも上演されており、競争は結構激しいと思います。そして、結構普通に公演中止になります(特にツアー)。。。*)…

そして事実から目をそらしてはいけない。この時期は経済がとても不安定で危機的な状況で、資金面での賭けという要素ははかつてないほどに、製作をするに当たって、考慮に入れる重要な点になっていた。僕ら(の公演)を見に来るために人々がお金を払ってくれるかなんて保証は全くなかったのさ。つまり、僕らのミュージカルかその他のミュージカルかということでね。

たとえ多大な労力を払うことになったとしても、あるいは人々に対して最も誠実に対応しても、またあるいは、自分たちのありったけの心血を注いだとしても、ミュージカルというものは家族にとって絶対に必要な出費とは言えない。それがたとえ夢にまで見たすばらしい夜のひとときであったとしても、やはり余剰な特別出費であることに変わりはない。(ミュージカルは)食べものにありついたり、住まいを見つけるといったことには役に立たないからね。だから、僕たちは、そのことを自覚しているし、心の底から感謝することしかできない。だって、観客のお陰でこのミュージカルは地方の都市をツアーすることができて、また年末( *2013年の話。)に2回目の上演としてパリに戻ってくることができるんだから。

** これは、万国共通だと思いますが、不況の時に真っ先にカットの対象となるのが「余剰」出費である、エンターテイメント系の出費。。。そういった中でも、人々を惹きつけるものを作り出していかなければいけないというのは、やっぱり大変なことですよね。。。だから、ある意味、作品にカリスマというか、見てよかった!って思わせる要素がないと途端に「切り詰め」に遭ってしまう(苦笑)**

ML: でも、その後、ミュージカルが実際、舞台で上演されるのを見たとき、そういったストレスについて後悔することはきっとないのではないですか?

DA: 確かに、それは本当だね!後悔することなんて一切できないよ。ストレスの中で生活してきたことも、睡眠時間を削った夜もそんなことは大した問題じゃないから。僕らは、すごく(作品を)誇りに思っているし、特に僕らはとっても幸せだよ。舞台的な観点から言えば、僕の考えでは、このミュージカルは最も美しくて、最も完璧なものだと思う。そしてこれは、全く新しいものを僕らに提供してくれた演出家であるジュリアーノ・ペッパリーニのお陰なんだ。1789で、僕は、僕らの初めてのミュージカルである「十戒」を作ったときに感じた感情を再び感じることができたよ。

ML: なぜ人々はこんなにもこのミュージカルに惹かれるのだとあなたは思いますか。

DA: 「1789バスティーユの恋人たち」に、観客はこの時代の最も美しい部分、最も現実離れした道筋を見出すことができるからじゃないかな。この時代、世界を変えるために人々は再結集し、手を取り合う術を心得ていた。それからすごく時間は経ったけれども、今日でもこのミュージカルは訴えかけるものがあると思うんだ。僕は自分が感じたものを捕らえようとしてきたんだ。僕らはあるシステムの終わりに直面していて、我々の世界、我々の経済は、行き詰まりの状況にあると僕ははっきり感じるんだ。この状況から立ち直るための解決策が見つかるかどうかは僕にはわからない。でも、僕はそれでも大きな希望を持っているよ。先人たちはいつも解決策を最終的には見つけてきたからね。そしてこんな風に考えているのは僕だけではないはずだよ。なぜなら観客は、すっかり気が動転して、心をかき乱されることになるけれども、でも幸せを感じて、目をキラキラさせながら、このミュージカルを見て会場を後にしている(のを見ている)からね。

**1789がまさか経済やあるシステムの終わりなぞという壮大なお話に関係しているとは夢にも思いませんでしたが(失礼!)でも、ミュージカルを見て3年経って改めて詞を訳したりしていて、どんな悲惨な状況にあっても人は立ち上がる力を持っている、世界を変える力を持っている、というメッセージは確かに私も強く感じました。閉塞感のある時代だからこそ、訴えかけたい希望、それがプロデューサーの方たちの思いだったのかもしれません。***


2 件のコメント:


  1. こんにちは。

    プロデューサーさんのインタビュー記事、もう一度じっくりと読ませていただきました。
    制作をされた方のインタビューは、あまり読む機会がないので、とても興味深かったです。

    新しいミュージカルの記事も、ゆっくりと読ませていただきますね。

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    1. 一度、いろいろな理由からお蔵入りしていたものなのですが、、、読んで何かを感じていただけたらのならとてもうれしいです>< 私も、この記事を読んだ時、「革命」を選んだ理由ってこういうことだったんだーとすごく興味深く思った記憶があります。新しいアーサー王も開幕したばかりですが、なかなか評判上々なようです^^ ひょっとするとこれも日本に輸入される日が来るかもしれません笑。

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