2014年12月21日日曜日

パリ観劇録2014 vol.2 - Mistinguett, Reine des années folles (1) 総評編 

さて、第2弾は、Mistinguett, Reine des années folles(以下、Mistinguett。)のレポです。
(HP(フランス語)はこちら。オフィシャルfacebookページ(フランス語)はこちら。youtubeページはこちら。写真やバックステージ映像なども見れます。)

実は、今回の元々のパリ行きの目的は、このミュージカルを観に行くことでした。プロデューサーが前回の観劇旅行で観た1789 Les amants de la Batilleと同じアルベール・コーエンさん(今回はいつもデュオで製作を行っているドーヴ・アチアさんとは、離れて彼がソロでプロデュースを行っています。)だったこと、そして、時代がタイトルにもある通り、des années folles(黄金の20年代、平たく言うと華麗なるギャツビーの世界ですね。。。)ということで、内容的に大人向けになりそうと思ったのと、ファッションが結構好きな自分としては、衣装がすごく見てみたいというのが主な理由でした。

http://youtu.be/F_3xMbwrvDc
最新のダイジェスト映像がこちら。

http://youtu.be/3zHXObtfFgw
実際フィナーレはこんな感じでかなり華やかでした。
1列目から撮った映像です。

タイトルにもなっているミスタンゲット(Mistinguett)は実在したレヴューの女王と呼ばれた伝説の女性(Wiki(日本語))で、今回使用されている劇場であるカジノ・ドゥ・パリ(Casino de Paris)で公演を行っていたそうです。かなりご高齢になってからもずっと踊り続けていたという生粋の踊り子。

当時のMistinguettが出演していたレヴューの映像。
この映像の中で歌われている"C'est vrai"もミュージカルで出てきます。

実際このミュージカルも、ミスタンゲットの一代記というよりも、Casino de Parisの劇場を中心にした、ミスタンゲットと彼女を取り巻く人々との人情劇といった要素の強い劇でした。というわけで、ある意味、Casino de Parisはこのミュージカルの主人公の一人(一つ)でもあるとも言えると思います。

ミュージカルの中でも重要な役割を果たす
Casino de Parisの劇場

モガドールと同様、伝統を感じると共に、この劇場は元々レヴューを中心に公演を行っていたミュージック・ホールということで、入った瞬間から ちょっと大人の香りがする劇場でした。

この劇場は至るところに鏡があるのが特徴でした。
そしてシャンデリア!
客席案内係の人が、まず、黒いスーツでビシッと決めた、ちょい悪なおじさんたちでした笑。Casino de Parisは座席に席番号がないので、この劇場をよく知っていない人でない限り、自力で席を見つけるのは結構大変=おじさまたちに席を教えていただかないと、席にたどり着けません。このおじさまたち、テキパキと観客を席に連れて行きます。

http://youtu.be/LGefLMfmIQU
プレミアの日を追った映像。
バックステージ映像がいっぱいあります。
Mistinguettと時代は違いますが、
舞台裏は当時もこんな感じだったんじゃないかなあ。

2年前のPalais des Sportsのときもそうですが、このような客席案内係の人にはチップが必須というわけではないようですが、たいていの人はチップを渡しているようです 。でも、観察していると渡してない人もいたので、私も特にチップは渡しませんでしたが、だから愛想が悪くなるとか、そういったことは特になかったです。

キラキラ輝くシャンデリア。レヴュー全盛期の香りがします。

そして、ホールに入るとパンフ売りの方が、パンフを売り歩いていました。ちょっとノスタルジックな感じ。が、そのパンフ売りの方というのが、、、なぜかオネエ系のおにいさん(おじさん?)でした笑。「私からプログラム(パンフ)買った〜?」や「知ってるわよ。あなたたち、今日来たの、3回目でしょ?ちゃんと見てるんだから!」といった感じで観客の人にやたら絡んでいました笑。服装も20's感がする白ハットをかぶっていて、舞台が始まる前からほんとfolles笑。

キラキラー。Vol 2.
劇場内部。1階1番後ろの席からの眺め。
舞台の上の天蓋のようなものもオシャレでした。

劇場の雰囲気はこんな感じでした。

さて、この作品、前回レポしたLe bal des Vampireとありとあらゆる面で対照的でした。

まず客層。劇が1920/30年代シャンソンということで、日本の懐メロ(っていうか歌謡曲?)的感覚のためか小さな子どもはほとんどおらず大人(30代、40代中心)、そしておじいちゃん、おばあちゃんがいっぱいでした。

そして、Vampiresが最新の技術を駆使したミュージカルであるのに対し、こちらは、舞台もプロジェクター等のヴィジュアルエフェクトはほぼなく、クラシックなセット。

楽しみにしていた衣装ですが、これは、確かに見応えがありました。特に1列目で見ていたときは、ディテールがよく見えて、すごく美しかったです。特に、レヴュー用の衣装を品定めするシーンがあるのですが、キラキラ派手派手なのですが、なんと言うか優雅。すてきでした。


舞台横のボックス席から。
さらに、これが一番の驚きだったのですが、実は、台詞と歌の割合が、感覚的には台詞が8割、ときたま歌が差し挟まれるぐらいの感じで、ミュージカルというより普通の演劇、お芝居に近い感じでした。前回の観劇旅行で観たアチア、コーエンプロデュースの1789は最新の技術を駆使した「最近のミュージカル」だったので、コーエンさんプロデュースのミュージカルが「お芝居」中心のクラシックな舞台になっていたのはかなり意外でした。

舞台に近いので、台詞のスピードは普通の発話とほぼ同じぐらいの超高速(に少なくとも私は感じました)爆。というわけで、実はストーリーは2回目の観劇で初めてなんとなくわかったという感じでした爆。というわけで、率直に言うと、フランス語が全くわからないとこのミュージカル、結構退屈してしまうと思います(特に1幕。2幕には、レヴューのシーンなど、観ていて楽しめる場面が結構あるのですが。)。

さらに、ヴァンパイア物は、ジャンルとして確立されているところがあるので、わりと国境を越えて、楽しめると思うのですが、このミュージカルは、「レヴュー」、「ミュージック・ホール」、「シャンソン」というフランスの文化にすごく根ざした物語&音楽なので、フランス文化に浸透していない人にはピンときづらい舞台かもしれないと思いました。途中でフランスでは有名なミスタンゲットの歌が何曲か出てくるのですが、観客の人(特に年配の人)は一緒に口ずさんでいました。が、外野の私には、その世界観に入るのが結構難しかった気がします。

ただ、これは外国人の自分に限ったことではなく、恐らく、ミュージック・ホールやレヴュー全盛期を知らないフランスの若者たち(Casino de Parisも当初は、レヴュー専用の劇場だったようですが、レヴューの人気に翳りが出てきたため、レヴューをやる劇場としての役割は今はなくなり、現在は、もっぱらコンサートや今回のようなミュージカルの会場として使用されているようです。(Casino de Parisの歴史(フランス語)→こちら)。というわけで、若者たちにとっても、ミスタンゲットやミュージックホールの煌びやかなレヴューというのは、未知の世界なのだと思います(フランス語学校の先生をやっている女の子にミスタンゲットについて話してみましたが、誰それ?って感じでした。あと、日本に帰ってから現地の人の観劇感想録をちょろちょろ読んでいたのですが、やはり休憩中にスマホでミスタンゲットってどんな人なのか調べた(笑)、と書いている人がいました。 )。

ミュージカルで使用されていた楽曲ですが、ミスタンゲットが当時歌っていた曲("Mon homme"、"C'est vrai"、"Ça c'est Paris"、"Je cherche un millionnaire")も含まれていましたが、オリジナルの曲も結構たくさんありました(登場人物に架空の人物が混じっているということもあるのだと思うのですが。)。

オリジナルがある曲は"C'est vrai"や"Ça c'est Paris"はわりとオリジナルに近いアレンジだった気がしますが、"Mon homme"は、オリジナルのシャンソンらしさを残しつつもちょっと現代風のアレンジ、"Je cherche un millionnaire"もかなりjazzyな仕上がりになっていました。

ミュージカルのオリジナルの楽曲ですが、こちらも、ベースはシャンソンというか、華やかなバンド音楽に現代のディスコ的な感じが加えられた音楽みたいな感じでした。

これらのアレンジが果たして、良かったのかというのが最大の問題かと思いますが、私個人の感想としては、それほど違和感なく楽しめました。下記の映像を見てもらえればわかると思いますが、ミスタンゲットの楽曲をそのままミュージカルに持ってくるのはやっぱり、無理だったと思います。。。ただ、実際にミュージック・ホールでレヴューを見ていたおじいちゃんやおばあちゃんたちからすると、モダン過ぎ?だったかもなあという気もします。

逆に若い子からすると、やっぱり古くささが否めないかもなーという気もしました(来年、今度はアチアさんがアーサー王の新作ミュージカル(映像こちら)をやるのですが、そちらと比べると、どう考えても、若い子が寄ってくのはああいうポップな感じのミュージカルな気が。。。)。というわけで、このミュージカルのターゲットとする対象年齢設定が意外と難しいかもなという気がしました。


ミスタンゲットが歌うオリジナルの"Mon homme"

http://youtu.be/Lsq3QkFM088
本公演に先駆けて行われたShowcaseの映像ですが、
舞台版の雰囲気がよく出ていると思います。
Disco風の電子音が入っていたり、現代風のアレンジが
加えられています。

http://youtu.be/fVabMMWiqJ0
ミスタンゲットのオリジナルの
"Je cherche un millionnaire"

http://youtu.be/uhlsLJHj5P8
Mathilde Ollivierちゃんが歌う"Je cherche un millionnaire"
彼女は、ミスタンゲットに憧れる少女の役なのですが、
劇中、ミスタンゲットの踊り子になるためにこのミスタンゲット
の曲をミスタンゲットの前で披露する(オーディション)
(実は彼女は踊れないのですが、歌が上手いという設定)
というシーンがあります。
スイングがかかってかなりジャズ風。

ちなみに、Mistinguettでは、音楽はバンドも入っていましたが、Vampireと違い、録音とバンドの両方の音源が使われていました(現地の方のブログでは、ミュージックホールの話なのに、電子音ばかりで録音なのはせっかくのミュージック・ホールの雰囲気を台無しにしているという意見も見かけました。確かにそう言えなくもなくもなかったです。)。

歌手も、Vampireが正統派ミュージカル歌手っぽい人を起用してるのに対してこちらはちょっとハスキーな大人な感じの歌手をたくさん起用。ダンスの振りも、Vampireは、芸術的なダンス、こちらはかなりセクシー&コミカルでした。


以上、総評でした。。。

舞台の詳細や、歌手の人たちについては次回書いていきたいと思います。

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